さあ寝るぞと
目を閉じる
すると今日もやってきた
灯りの消えた暗い部屋
目を閉じているから瞼の隙間から光だって漏れない
そういう状態になるとやってくるのが
顔たち
暗い中にもあもあもあとグレーの煙が湧きだしてくる
目を閉じた私の目線の先
グレーの煙が視界の三分の一ほどを占めた時
顔がやってくる
グレーの煙の中心から湧くように
小さな顔が誕生して
迫ってくるようにどんどん大きくなって
私の目の前で巨大になった顔がぶつかる直前にひらりと私をかわして
存在感を薄くしグレーの煙の中心に吸収される
そのスピードが速い
顔がぐんぐん迫ってくるし
顔は次から次へと誕生して
1秒に1つ顔が生まれては私に迫って消えていく
顔は一つ一つが真っ黒で
グレーやネイビーで表情や髪の毛が縁どられている
表情はみんな怒ってる
ちょっとやそっとの怒った顔じゃない
何かを叫んだ顔が
何かを吐き出している顔が
次から次へと私に迫ってくるんだ
疲れて
眠ることができるまで
顔はそれぞれ違う人
知っている人の顔のような気がするし
知っている人の怒った顔のような気がするし
でもわからない
ただ
何かを叫んで
噛みつくように
次から次へと私に迫ってくるんだ
首もない黒い顔人間が
だからなかなか眠れない
静かに耐える
やっと意識を手放した頃
次に私はビルの屋上に立っている
白い霧が立ち込めていて
1m先が見えないくらい白い
私はビルの端から落ちる
うっかりしたのか
それとも必然か
分からないくらい自然に
地面に落ちる瞬間
体がびくっと跳ねて
眼が覚める
少し目を開けてすぐに寝る
すぐに目を閉じて
何も考えないように静かにしていれば
この後眠る
目を閉じると次から次へと怖い顔が迫ってきて
疲れて眠るとビルから落ちる夢を見て
地面に叩きつけられる瞬間体がびくっとして眼が覚める
その後落ちるように疲れて眠る
本当に眠れる
これが私の小さい頃の眠り方
幼児期は
眠る時に目を閉じると
必ず怖い顔が迫ってきた
いつもその怖い顔に耐えることから私の眠りは始まる
毎日
眠ろうと目を閉じるたび
すごく疲れた
嫌だった
嫌でもいつも現れる顔に
慣れなかった
いつからか顔は現れなくなった
顔に迫られなくても
ビルから落ちなくても眠れるようになった
今なんか3秒で寝落ちくらい
寝るの はやいらしいからね
布団に入った
と思ったら
すぐに
すー すー
と寝息が聞こえてくるらしい
よく眠って
余程疲れているのかな
小さい頃の私は
怖い顔に迫られて すぐに眠れなくて 余程疲れていたのかな
もう今は
余程面白い夢しか覚えていないし
印象的な夢しか覚えていない
良かったな~
良かったね
私
さあ
そろそろ朝ごはんを作ろうかな